1弾・4話 救い手の能力


 稜加とイルゼーラは民家より大きい紫の屋根に灰色の壁の侯爵邸に戻ると、サヴェリオとアレスティア侯爵にボルカーニと名乗る人物からの呼び出し状を受け取ったことを伝えると、侯爵とサヴェリオは反対した。サヴェリオの父でイルゼーラの伯父でもあるアレスティア侯爵は栗色の髪に水色の眼とたくわえたあごひげと雄々しい顔つきにえんじ色のガウンをまとった男性で、妹夫婦亡き後はイルゼーラの保護者となっていた。

「よした方がいいぞ、イルゼーラ。どう考えてもガラシャの罠だ」

 机と本棚のある屋敷内の書斎でアレスティア侯爵はイルゼーラに言った。稜加はやっぱしな、という表情をしたがイルゼーラは答える。

「伯父上、たとえ罠でも相手の対応に従っておかないといけません。それに父の無念を晴らすのを待つのに一年もかかったのですよ」

 イルゼーラの台詞に稜加は疑問に思ってイルゼーラに尋ねる。

「あの、王様って病気で亡くなったんじゃ?」

 するとイルゼーラは父王の本当の死因を稜加に伝えた。

「それは表向きよ。父のレザーリンド王はガラシャに殺されたのよ」

「ええっ!?」

 イルゼーラの父王の本当を聞いて稜加は仰天する。

「父上はガラシャと再婚して間もなく、次第に衰弱していって、三ヶ月後には亡くなったわ。日頃から健康に気遣っていて、体が悪くなったら医師に診てもらう父が、ガラシャ女王の言葉を信じてしまって、そのまま逝ってしまった。女王は医師やお城の者や国民に『今は苦しんでいますが時期に良くなるでしょう』と騙してね。

 本当の母が七年前に難病で亡くなり、二年前にガラシャが父に取り入って妃になった時、わたしは母を亡くした父が寂しいのならと再婚を認めてあげたのに……」

 イルゼーラは自分の父の死が継母のせいだと稜加に話すと、次はアレスティア村にいる理由を語る。

「わたしは父の死がただの病死でないことに気づいてたから、ガラシャがわたしの命も狙っていると察すると、王城の衛兵を務めるサヴェリオに頼み込んで、母の故郷であるアレスティア村へ逃げたのよ。ガラシャも単純でないからわたしを部下に追いかけさせて捕らえさせたりなんかしたら、国民の怒りを買って自分の立場が危うくなるのをわかっていたからね」

 稜加はイルゼーラの経緯を聞くと、彼女の苦労がどんなものか理解した。

「イルゼーラがわたしの所へ転がり込んできた後、レザーリンド王国では税の増加や女王に反する者に対する厳罰化などの政治が行われている。レザーリンド王国の災厄とはガラシャの独裁的な政治のことだろう」

 アレスティア侯爵が現在のレザーリンド王国の状況を稜加に教える。

(ガラシャ女王のやっている独裁政権は自分が絶対な立場になって、権力を好きなまま振るうのはどこの世界でも同じなんだな)

 稜加は社会の歴史で習った政治問題を思い出して悟り、アレスティア侯爵に言ったのだった。

「わたしとイルゼーラ、ボルカーニという人物に会いに行ってきます。たとえ、どんなリスクがあったとしても」

「おい、いいのか!?」

 稜加の決心にサヴェリオが挟んできた。アレスティア侯爵は姪と異世界からの救い手がああ言っているのを目にすると、思いとどまるも行かせることにした。

「わかった。だけど、ちゃんと帰ってくるように」


 稜加とイルゼーラは呼び出し状の場所に向かっていく野道で、稜加はスターターの中にいるデコリの様子を見てみた。デコリはスターターの画面から出ると、稜加の目の前に浮く。

「稜加、おはよう。どこ行くの?」

「うん。呼び出されてね、そこへ向かっているの。あ、この人はレザーリンド王国のイルゼーラ姫よ」

 稜加はデコリにイルゼーラ姫を紹介する。イルゼーラはパールグレイのドレスから、動きやすい服装の白い折り返しジャケットに紫色のフリルシャツと紺地に白のストライプのハーフスラックス、足元は折り返しのついた赤いブーツで髪型も後ろで一つのシニヨンからハーフアップにしていた。

「初めまして、イルゼーラ姫。稜加のパートナーとなったデコリといいます」

 デコリはイルゼーラにあいさつをし、イルゼーラもデコリを見てほほ笑む。

「初めまして、デコリ。あなたははぐれスピアリーなの?」

 イルゼーラがデコリに尋ねてくると、稜加は軽く説明する。

「あの、デコリはわたしの祖母のパートナーで、祖母は若い頃にエルザミーナに来たことがあるらしく、祖母はわたしが小四の時に亡くなって……」

「ああ、そうだったの。稜加のおばあさまもエルザミーナの救い手で、デコリもその時のパートナーだったのね」

 稜加はふと気づいてイルゼーラに訊いた。

「あの、イルゼーラにもパートナーの精霊がいるんだよね?」

「わたしのパートナーのスピアリー? それは……」

 イルゼーラが教えようとした時、呼び出し先の周りに数本の木に民家の敷地と同じ広さの空き地に誰かがいることに気づいた。若い男らしく長身で肌は浅黒く、ぼさぼさの黒髪に赤茶色のいやらしい目つきで黒地に炎模様の長い服を着ていた。

「あのう……、もしかしてこの呼び出し状を送ったボルカーニさん?」

 稜加は男に尋ねてみると、男はしゃがれた中音の声を出して答える。

「ああ、そうだ。おれはボルカーニ。女王陛下の城の侵入者が脱獄したっていうから、ここを探しに来たらいたってことよ。犯罪者が逃げたら捕らえるのは、当然のことだろう?」

 稜加は察した。自分がサヴェリオの協力もあって王城から逃げ出したとはいえ、女王が気づいて追っ手を放ったことを。それからボルカーニは稜加の隣にいるのがイルゼーラだと気づくと、彼女に敬語を使ってくる。

「それとイルゼーラ姫さま。お城に帰りましょう。王族が家出なんてはしたない。お義母(かあ)さまも心配しておりますよ」

 しかしイルゼーラは拒んだ。

「慇懃無礼な態度を見せたって無駄よ。あなたはガラシャ女王からわたしと稜加の捕縛を命じられていることはわかっているのよ。わたしはガラシャ女王に従うくらいなら、反逆して散る方を選びます」

イルゼーラの言葉を聞いて、ボルカーニは冷めたように態度を変えて、冷たい口調で二人に言った。

「何だ、ずい分と意地の強い姫だな。仕方がない。無理矢理でも連れていくか」

 そう言ってボルカーニは懐から一つの素っ気ない人形を出し、更にスターターを出す。スターターは稜加が持っている薄いピンクなのに対し、ボルカーニのスターターは朱色である。ボルカーニは人形を高く放り投げるとスターターを開き、更に黒いマナピースをスターターのくぼみに入れる。

「リアライズ、ソウルコピー発動!」

 すると人形が赤黒い光に包まれて、人形がどんどんボルカーニと同じ大きさになり、更にボルカーニと同じ暗い赤の鎧兜に剣を持った戦士の姿になって稜加とイルゼーラの前に立つ。

「え、何? 一体……」

 稜加は人形がボルカーニの持っているマナピースによって人間サイズの鎧戦士になったのを目にして驚く。

「どうだ、こいつはおれの姿と思考と性格を模した魔変人形(ミスティックプーペ)だ。ガラシャ女王が授けてくださったんだ。こいつはおれの分身だから、おれの思いのままに動く優れものだ」

 そう言って魔変人形は稜加とイルゼーラに向かって進んでくる。稜加とデコリはどうしようと狼狽えるも、イルゼーラが懐からスターターを取り出してきた。イルゼーラのスターターは淡い紫色であった。

「アレサナ、出てきて!」

 イルゼーラがパートナーの精霊の名を呼ぶと画面が光って、一体の精霊が飛び出してきて、イルゼーラの前に現れる。イルゼーラのパートナーの精霊はデコリと同じく三等身であるが、虹色がかったミルキーホワイトのロールヘアとドレス、右が緑で左が赤いオッドアイで、デコリと違って高貴な感じがした。

「お呼びですの、イルゼーラ」

 アレサナはイルゼーラに問いかける。

「ええ、ガラシャ女王の手先が現れたの。しかも恐ろしい人形を使ってきて……」

 イルゼーラの話を聞いて、アレサナはうなずいた。

「それじゃあ、いきますのね」

「ええ、戦うわ」

 そう言ってイルゼーラはペンダントを開き、白地に虹色のマナピースをスターターにはめ込んだ。すると、白と虹色の光が発せられてイルゼーラを包んだ。

「い、一体何が……!?」

 稜加が目の当たりの状況に驚いていると、デコリが教えてきた。

「人間と精霊が〈フュージョナル〉のマナピースを使って、一つの姿になるの」

「一つの姿……?」

 するとイルゼーラとアレサナを包んでいた光がはじけて、アレサナと一つになったイルゼーラが姿を現す。

 顔と背格好はイルゼーラのままだが、髪の色が金髪から虹色がかったミルキーホワイトになり、白と淡い紫のヘッドギア、同じ色のミニスカート型のスーツに腕と脚は長めの淡い紫のグローブとブーツをまとって、左手首には銀色のウ腕輪がはめられていた。

「変身……しちゃった」

 稜加はイルゼーラの変化を目にして驚いて突っ立っていた。

「精霊と一つになった人間は姿が変わるだけじゃない。強くなるんだ!」

 デコリがそう教えた。

「これがイルゼーラ姫の〈救い手〉としての姿か……。面白い、見せてみろ!」

 そう言ってボルカーニはスターターにマナピースを二枚はめ込んで、赤い炎の浮彫と白い矢印が三つ刻まれたピースが効果を発動させ、魔変人形の剣から炎が出てきて、更に剣を振るってイルゼーラの正面と左右に炎が飛んでくる。稜加はその恐ろしさに思わず引いてしまうが、イルゼーラは自分の持っているマナピースを左手首の腕輪にはめ込んだ。水の雫の浮彫の青いマナピースと紫色の膜の浮彫のマナピースを発動させた。

「〈ウォータースプラッシュ〉、〈サイコバリア〉、発動!」

 するとイルゼーラの周りに水の膜が張られて魔変人形の出してきた炎を防ぎ、水と炎は水蒸気爆発で、大きな音を立てて白い霧が盛大に出た。

「くそ、やるな! なら〈ウィンディスピン〉だ!」

 ボルカーニが霧の目くらましを吹き飛ばすためにスターターに桃色のつむじ風の浮彫のマナピースをスターターにはめ込み、魔変人形は剣を横にして回転させて、霧を吹き飛ばした。

「きゃあああ!」

 イルゼーラは敵の起こした風で飛ばされ、真後ろの木にぶつかった。

「わっ、イルゼーラ!」

「大地の精霊は風と樹の攻撃に弱いのよ!」

 稜加は木にぶつかって倒れこむイルゼーラを目にして声を上げ、デコリが精霊の弱点を教えた。

「くっくっく……。精霊と融合しても、弱点は変わらないようだな。このまま連れていくか」

 ボルカーニはイルゼーラの様子を目にして、魔変人形がイルゼーラに近づく。その時、稜加が石を投げつけてきて魔変人形を止めた。

「やめて。こんなことをするのは!」

 ボルカーニは稜加を見て、冷ややかに笑う。

「脱獄犯のくせに生意気な。精霊を連れているとはいえ、お前に何が出来る?」

「イルゼーラは精霊と合体して姿を変えたわ。だったら、わたしもデコリと合体して……」

 そう言って稜加は自分が持っている白地に虹色のマナピースをスターターのくぼみにはめ込んだ。しかし……。

「あ、あれ!? これを使えば、わたしもデコリと合体できる筈なんじゃ……」

 その様子を目にして、イルゼーラが稜加に言ってきた。

「稜加……、このマナピースはあなたと精霊の気持ちが同調していないと発動できないのよ」

「そ、そんなぁ」

 稜加は条件がないと精霊と合体できないと知ると、ボルカーニは好機と察して魔変人形に命じる。

「脱獄した女とイルゼーラ姫を捕らえろ。精霊と合体できない救い手は凡人以下だな」

 魔変人形は小高い金属音を上げながら、稜加とイルゼーラに歩み寄る。その時、デコリが飛び出してきて、二人を守ろうとしてきた。

「稜加とイルゼーラに近づくなー!」

 だが魔変人形は左手でデコリを弾き飛ばし、デコリは地面に叩きつけられてしまった。稜加が叩きつけられたデコリを目にして思わず声を叫んでしまう。

(わたしは、何も出来ないの? わたしはエルザミーナの世界に災厄が訪れた時の救い手として、エルザミーナの世界に呼ばれたというのに、精霊と合体して変身して戦う筈なのに、デコリと合体できないなんて……)

 稜加は自分の非力さにくやしさを感じ、デコリも弱々しくも起き上がろうとする。

「りょう、か……」

 稜加はデコリを目にして、自分もデコリもイルゼーラもイルゼーラを守り、ボルカーニの魔変人形と戦おうとする姿は同じだと気づいた。その時、稜加の白地に虹色の〈フュージョナル〉のマナピースが眩しく光りだし、ボルカーニもイルゼーラもこの光景に目がくらむも、稜加とデコリが融合するのを目の当たりにしたのだった。

「フュージョナル=スピアリー、セット!!」

 稜加は〈フュージョナル〉のマナピースをスターターにはめ込み、稜加とデコリは白と虹色の光に包まれ、稜加は自分が変わっていくのを感じる。光がはじけると、イルゼーラとボルカーニの前にデコリと合体した稜加が姿を現した。

 天然パーマの髪はパステルピンクのセミロングになり、両サイドに水色のリボンがついた白いヘッドギア、白い肩出しとミニスカートのワンピースにはパステルピンクの胸リボンとブルーの背中リボンベルトがついており、グローブとブーツはパステルピンクで、ブルーのリボンが巻かれていた。左手首にはイルゼーラのと同じ六角形の腕輪。

「デコリと合体できた……」

 稜加はデコリと融合して変身した自分の姿を目にして、出来なかったことが出来たことに実感する。

「ふん。いくら姿が変わったとしても、無能なのは変わらない。お前なんざ、すぐに倒してやるさ!」

 ボルカーニはマナピースをスターターにはめ込み、魔変人形の技を発動させる。魔変人形の剣が炎をまとい、稜加に振り下ろしてくる。

「稜加! 危ないわ!」

 イルゼーラが稜加に向かって叫ぶと、稜加は自分の持っているマナピースを左腕のブレスレットにはめ込み、水属性の雫の浮彫の青いマナピースと盾の浮彫の白い無属性のマナピースを発動させて、敵の攻撃を防いだ。

「〈ウォータースプラッシュ〉、〈ディフェンス・レベル1〉、セット!」

 すると稜加の前に水の盾が張られ、魔変人形の炎の剣は大きな水蒸気音を立てて消されてしまう。

「なっ……!? マナピースの使い方を知らない異世界からの者が、精霊と合体したら使えるようになっただと?」

 ボルカーニは稜加のマナピースの使い方を目にして怯む。魔変人形はというと、剣が急激に冷やされたために刃が折れてしまい、その時に稜加が別のマナピースを腕輪にセットして、とどめを刺す。白い鎖の浮彫と白い八方の光の浮彫のマナピースを同時にである。

「〈エネミーバインド〉、〈ライトエクスプロード〉、セット!!」

 すると稜加の腕のリボンが伸びてきて魔変人形を束縛し、更に魔変人形の足元に白熱光のドーム型の爆発が起きて、魔変人形は光の爆ぜる音と閃光に呑まれていった。その眩しさにイルゼーラとボルカーニも目を閉ざした程だった。

 閃光が治まると、魔変人形は元の素体だけの姿に戻り、空き地の中心には浅いすり鉢状の陥没と硝煙だけが残った。

「初めて精霊と合体しただけでも成功なのに、魔変人形も倒してしまうなんて……」

 イルゼーラは稜加のデビュー戦と初勝利を目にして呟く。稜加はその場に立っており、ボルカーニは稜加の戦法を見て怖気づいて逃げようとするも、サヴェリオと黒い軍服風の制服姿のアレスティア村の憲兵たちが駆けつけてきて、ボルカーニを捕らえた。

「イルゼーラさまに危害を与え、救い手にも危害を加えようとした罪で逮捕する。じっくり尋問させてもらうぞ」

「うう……、くそ」

 ボルカーニは憲兵たちに連行され、サヴェリオは精霊と合体した稜加とイルゼーラを目にし、彼女たちが生きていたことに安堵する。戦いが終わると、二人の体が白く光ってそれぞれ人間と精霊の姿に戻る。


 サヴェリオはイルゼーラと稜加と精霊を連れて侯爵邸に戻り、二人の身に起きた事の次第を侯爵に伝えたのだった。

「イルゼーラだけでなく、稜加くんも精霊と融合して、ガラシャ女王の手先の操る魔変人形を倒した、か……。君も天運に選ばれた救い手なのは確かだったな。だが、これはまだ幕開けにすぎないからな」

 アレスティア侯爵の言葉を聞いて、稜加とイルゼーラは耳を澄ませる。

「はい。救い手は、あと三人ということです」

「三人か……。でも、レザーリンド王国内にいるのかしら。それとも、遠く離れた国にいるとしたら……」

 イルゼーラは他の救い手の数を数え、稜加は他の三人がどこにいるか悩ませる。その時、デコリとアレサナが教えてくれた。

「それなら大丈夫ですわ。救い手だけが持つ〈フュージョナル〉のマナピースが教えてくれますわ」

「つまりマナピース同士が引き寄せてくれる、ってことだよ」

 それを聞いて稜加とイルゼーラは〈フュージョナル〉のマナピースを取り出してみると、ピースが仄かに輝いて、水面が輝く湖に葉や幹の色が異なる木々の生えた土地の幻影が映し出される。

「これって……」

「〈フュージョナル〉のピースが教えてくれているんだよ。次の仲間はここにいる、って」

 稜加がピースから出てきた幻影を目にし、デコリが教えてくれた。

「けど、森っていったって、レザーリンド王国や近くの国には森はたくさんあるしな」

 サヴェリオが呟くと侯爵が森の幻影がどこだか言った。

「いや、これはレザーリンド王国の森の中だ。森の中に湖があっただろう。あそこはアレスティア村より東にある森にあるものだ」

 それを聞いて、稜加とイルゼーラは思っていたより次の仲間の居場所がわかると嬉々となる。

「よし、そこに行けばいいのね!」

 稜加が張り切ろうとした時、イルゼーラが止めてきた。

「待って、稜加。確かに次の居場所がわかれば、それでいいでしょうけど、まずは旅の準備よ。あと、あなたは初めてとはいえガラシャ女王の手先と戦っていたから体は疲れているでしょうに」

「何も考えずに仕度もしないで旅立つのは、確実な浅はか行為ですわ」

 アレサナも稜加に注意してきた。

「それも、そうだったよね」

「今夜はゆっくり食べて入浴して寝なさい。旅立つのはそれからだ」

 侯爵が稜加に言うと、サヴェリオは稜加の行動を目にして呆れるも苦笑いをする。

「やれやれ、前途多難になるな……」

 かくして稜加は十代の頃の祖母も行っていたエルザミーナの世界の一国を災厄から救う者となり、精霊デコリと合体できるようになって、残りの三人の仲間を探すことになったのだった。