9話・金城国際重工


 絹橋市の住宅街の道路に一瞬白い光が現れるとすぐに消えて、シグルスは見慣れた光景を目にして、絹橋市にワープできたことを実感する。

「戻って、これた……」

 それからして高里家に向かっていって、玄関のドアを叩いた。するとこの日家にいた乙葉が出てきて、シグルスを目にしたのだった。

「まぁ、シグルスくん。いつの間に帰ってきていたの?」

「それは後にして、栄希くんと夢乃ちゃんは?」

「まだ学校よ。さ、中に入ってちょうだい」

 乙葉はシグルスを家の中に入れて、シグルスの話を聞いて、兄妹が帰ってくるのを待つことにした。

「そう。オーディンたちは地球を去ることにしたのね。まさかオーディンたちが二十七世紀の地球の生まれで、人間に反したために追い出されてアスガルド星の住人になっていたなんて……」

 乙葉はシグルスが赤城山のオーディンのアジトでの出来事を聞くと、驚いていた。

「まぁ、あなたたちが無事で良かったわ。栄希と夢乃が帰ってくるまでゆっくりしてなさい」


 絹橋第三小学校では本日の授業が終わって、栄希は図書室で待っていた妹の夢乃と親友の純也と一緒に帰ろうとしていた。

 昇降口へ向かう途中、栄希たちは偶然堀込兄弟と出会った。

「今日もお前らだけかよ」

 源が栄希にそう言ってくると、栄希は軽く頭にきたように返事をする。

「シグルスとフリッグがロボットだってことが日本中に知られて、オーディンたちの仲間だって知られたんなら、学校どころか買い物にも行けなくなったんだ。そしたらシグルスとフリッグは自分たちの星に帰らなくちゃいけないけどさぁ……」

「そうかい。フリッグさんは寂しいけれど、シグルスが自分の星に帰ってくれた方が、おれもせいせいするってもんだ。スパイなんて、こりごりだ」

「スパイ?」

 それを聞いて、栄希・夢乃・純也・軍が耳を向ける。つい口走ってしまったことに源は手で口を押えた。

「スパイって何だよ? どういうことだよ!?」

 栄希は源に向かって恫喝してきたが、周りに他の同級生もいるため、人気(ひとけ)のない裏門に移動することになった。


 高里兄妹・純也・軍は源の口から語られる話を聞いて、信じられないというようになっていた。

「そうか。源と軍くんがシグルスとフリッグさんと遊んだ日の帰り、金城国際重工の人がシグルスとフリッグがロボットだと見抜いて、目につけた源にシグルスのスパイをさせていたのか……」

 栄希は源の話を聞いて納得する。

「兄ちゃんがこんなことをしていたなんて知らなかった」

 軍も兄の様子がよそよそしいことには気づいていなかったとはいえ、大工業のスパイには驚いていた。

「でも仕方なく言われていたんだろう?」

 純也が源に尋ねてくると、源は気まずい表情をしてうなずく。

「でも、金城国際重工はどうしてシグルスとフリッグに目をつけたのかなぁ……」

 夢乃が呟いたその時だった。裏門近くの停車していた自動車からサングラスに黒いスーツの男が出てきて、背後から夢乃に近づいて夢乃の口をふさぎ、空いた手で夢乃を持ち上げて自動車の中に引きずりこんだのだ。

「夢乃!!」

 栄希はそれを見て男を追おうとしたが、男は自動車に乗っていたもう一人の男に言って、声をかけた。

「急いでここを去るんだ!!」

 夢乃は口をふさがれて両手を後ろに回されてもがいており、夢乃をさらった男が自動車の男にそう言って、自動車の男が車のエンジンを入れて、学校から走り去っていった。

「た、大変だ、警察に通報しなきゃ!!」

 純也は夢乃がさらわれたのを目にして職員室に向かい、堀込兄弟は立ちつくしていた。

「くっそ……、何で夢乃がさらわれなくちゃなんないんだよ……

 栄希はひざまづいて地面を拳で叩いた。


 それからして警察のパトカーがやって来て、先生たちは生徒たちを家に帰して、栄希と純也と堀込兄弟が先生たちと共に残って、警察から事情徴収を受けた。

「妹さんを誘拐した自動車や人物の特徴は?」

「自動車は紺色の乗用車でナンバーが埼玉の『か48―56』。夢乃ちゃんをさらったのが二十代半ばぐらいの男の人でサングラスに黒いスーツでした」

 純也が妹を目の前でさらわれて呆然としている栄希に代わって圭二さんたちに伝えた。また源も金城国際重工からスパイの報告として使われたスマートフォンを渡し、警察の解析担当の人が調べることになった。

「栄希、夢乃がさらわれたって本当!?」

 栄希たちがいる教室に乙葉が入ってきた。学校の先生から夢乃が誘拐されたと聞いて家から急いで駆け付けてきたのだ。

「何で、何で夢乃が……」

 母はパニックになっており、牧野先生たちが母をなだめた。

「落ち着いて下さい、お母さん。警察の人が夢乃ちゃんを救出してくれますから……」

 牧野先生は母を落ち着かせようと必死になる。後は警察に夢乃を任せて、栄希は母と、純也と堀込兄弟も家に帰された。

 家に帰ると、シグルスが栄希と母を迎えた。

「お母さん」

シグルスは母に声にかけ、申し訳なさそうな顔をした。

「シグルス、帰ってきてたのか」

 栄希がシグルスを目にして喜ぶも、シグルスに今日の放課後に怒ったことを伝える。

「夢乃ちゃんが誘拐……?」

「シグルス、夢乃をさらったのは金城国際重工の奴らだ。今日、源から教えてもらった」

 栄希は源が金城国際重工の社員からシグルスのスパイをさせられていたことを話した。

「そんな……、堀込くんがぼくのことを監視して報告する金城国際重工のスパイをさせられていたなんて……。やっぱりぼくやお姉ちゃんは地球にいちゃいけなかったのかな……」

 シグルスがもらすと栄希は否定した。

「そんなことない! そりゃあ、シグルスとフリッグが突然現れて、しかもロボットだったことには驚いていたけど……、この一ヶ月以上の間、二人と暮らして楽しかった!! 悪いのはシグルスとフリッグじゃない。ましてや居間の地球を侵略しようとするオーディンたちでもない。金城国際重工だ」

「金城国際重工……」

 シグルスは呟いた。そして栄希と母に待つようにと自分の部屋へ向かっていった。シグルスはオーディンたちから渡された端末を動かすと、赤城山にいるオーディンたちの所に連絡した。

『こちらオーディン、応答願う』

 端末の画面にオーディンの顔が映し出される。

「陛下、シグルスです。ぼくの友達の夢乃ちゃんが金城国際重工の人たちにさらわれたんです。金城国際重工のことを調べてくれませんか」

『金城国際重工か……』

 シグルスの連絡を聞いてオーディンが呟く。

『わかった。今調べる。しばらく待ってなさい』

 ここでオーディンの連絡が切れて、その五分後にオーディンからの返信が来た。

『シグルス、応答願う。金城国際重工は我々のいる地点から南下四百五十ポイントにあって、埼玉県の秩父という町にあることがわかった』

 オーディンからの報告を受けてシグルスはあることをオーディンに伝える。

「実は……、ぼくの友達の夢乃ちゃんが金城国際重工の社員に連れ去られたんです。助けに行かないと」

『君の友達とはいえ、我々に協力してほしい、ということか? だけどヨルズたちは……』

 オーディンが言うと、画面にフリッグの顔が映し出される。

『そこに行ってはいけないわ! 金城国際重工はあなたが狙いよ! 金城国際重工は夢乃ちゃんをさらってシグルスを捕らえるつもりよ!』

 フリッグが通信越しに弟を止めた。

「でも……、放っておけないよ」

『シグルス、訊いてくれ。フリッグが君を止めようとしているかわかるか?

 三日前、ヨルズが今の地球の各地の工業に関する情報をハッキングして集めた結果、金城国際重工は軍用兵器を造ろうとしていることがわかった』

 オーディンはシグルスに金城国際重工が行おうとしている情報を教える。

『ある軍事国をバックに戦闘用ロボットの開発を行おうとしている。金城国際重工は偶然とはいえ、君たち姉弟に目をつけたのだろう。

 それもバックからの命令の他、ロボット兵士で儲けようとしている』

「戦闘用ロボットの開発……」

 それを聞いてシグルスは衝撃を受ける。金城国際重工の企みと夢乃が誘拐された訳を。

「でも、ぼくは夢乃ちゃんを放っておけません! ぼくとお姉ちゃんを地球に住まわせてくれた、大切な友達だから!!」

 シグルスはオーディンと姉に訴えた。その時、シグルスの部屋に栄希と母が入ってきた。

「栄希くん、お母さん……」

「そうだったのか、シグルス?」

 三人はお互いの顔を見つめ合わせる。


 シグルスはオーディンとの通信をそれなりに終わらせて、いつもより早く帰ってきた父と共にリビングに集まって会議した。夢乃が誘拐されたことを聞きつけて。

「話はわかった。だけど、どうしても行くのかい? 金城国際重工へ」

「そうよ。警察が夢乃を探し出して、金城国際重工の経営者や重役はいずれ逮捕されるだろうし……」

 高里夫妻はシグルスの話を聞いて納得するも、よしてほしいと思った。

「もしかしたら警察もグルになって、シグルスを捕まえて戦闘ロボットのベースにされたりでもしたら……」

 栄希は両親に伝える。でもシグルスは金城国際重工に行くことを決めた。友達を取り戻すために。


 翌日、シグルスは昨夜前もってオーディンは自分を赤城山のアジトにワープさせてほしいと連絡し、朝食後にワープ装置のレコーダーブレスを作動させた。シグルスは高里家に来た時の服装である赤い縦襟のジャケットにカーキ色のロングパンツに足元は赤いエナメル材のハイカットシューズの姿だった。

「それじゃあ、行ってきます」

シグルスはブレスレットからの白い光に包まれると、あっという間に高里家のダイニングから赤城山にワープして消えたのだった。

「……二十七世紀とはいえ、未来の地球と異星の科学力ってすごいな」

 父がワープして消えていったシグルスを見て呟いた。

(シグルスも夢乃もちゃんと帰ってきてくれよ……)

 栄希は祈った。


 シグルスは赤城山の廃墟の中のワープカプセルに戻ってくると、姉とラタトスクが出迎えてくれた。

「シグルス、戻ってきたのね!」

 フリッグがシグルスに駆け寄る。

「うん。急いで金城国際重工に行かないと……」

「でもワープ装置は一日に一回しか使えないんだぞ? まさか歩いてでも向かうのか?」

 ラタトスクが尋ねてきた時、ラーンがワープ装置のある部屋に入ってくる。

「外に出てちょうだい。いい物があるの」

 何のことかと三人が廃墟の外に出ると、そこには七体のヘリコプターのようなプロペラに昆虫のような六つの脚の機械があったのだ。

「これってドローン?」

 シグルスが同じく外に出ているオーディンたちに尋ねると、オーディンは答える。

「ヘール以外の我々は空を飛ぶことが出来ない。このドローンを使えば金城国際重工に行けるだろう」

 それを聞いてシグルスは気づいた。

「一緒に来てくれるんですか?」

「ああ。金城国際重工に誘拐された人の子がシグルスの友達なら、協力してやってもよいがな」

 オーディンがそう言ってくれたのを見てシグルスは礼を言う。

「ありがとう、陛下。みんな、ありがとう!」

「本当は対人間の戦闘部隊用に造ったんだけどな」

 フェンリルがドローンを造った理由を言った。ヨルズはフリッグに向かってこう言った。

「あなたはここで待っていてちょうだい」

「あ、はい……」

 するとドローンはプロペラを動かして浮遊し、六つの脚でヘール以外のロボットの背中を掴んできた。ヘールは背中のエンジンを起動させて上昇する。

「それでは行ってくるね!!」

 シグルスはフリッグに言うと、オーディンたちと共に金城国際重工に向かっていった。

 フリッグはシグルスたちが見えなくなるまで空を見上げて見送っていた。


 この日の空は幸い晴天で風も緩く、吹き飛ばされる心配はなかった。シグルスは初めて上空から見た日本の景色を目にし、森や草地が緑色で家や学校などの大型施設が大小の駒のように見えるのを実感した。地上から数百メートル以上も離れた空の上はとてつもなく寒い。それは人間や羽毛のある鳥以外の生き物のことで、ロボットたちである彼らには関係なかった。

ヘールが高空図データから収集した記憶を頼りに、金城国際重工の本拠地を探していた。

「ポイント、ST804―200―65。金城国際重工を見つけました」

 ヘールがオーディンたちに金城国際重工の本社の発見を伝える。航空から見た金城国際重工の本拠地は山のふもとの平地に建てられた白灰色の正方形上の七階建ての大型建造物に北以外の三方は小さな長方形状の工場がいくつも並び、チャコールグレイの盤に白灰色の模型を置いてあるように見えた。

「ここに夢乃ちゃんがいるのか……」

 シグルスが金城国際重工の本社を目にして呟く。

「何か聞こえてくるよ。金城国際重工のビルの屋上からヘリコプターの音がする」

 ラタトスクが聴覚センサーを研ぎ澄ませてみんなに伝える。本当に金城国際重工の本社ビルの屋上から三台のヘリコプターがプロペラの轟音を響かせてやってきたのだ。ヘリコプターは黒鉄色で機体に〈金城〉の字の紋が刻まれていたのだ。

『ロボットたちに告ぐ。ここからは我々に従え』

 ヘリコプターの中にいる重役の一人がシグルスたちに無線で呼びかけた。

「チッ。いい気になりやがって」

「ぶっとばしてぇ」

 フェンリルとテュールが金城国際重工の命に不満を持ちつつも、スレイプニルが止めた。

「待て。今ここで暴れたりなんかしたら、元も子もないであります」

「スレイプニルの言う通りだ。わたしの人間の命令には従いたくないが、シグルスの友達のためだ」

 オーディンも答えた。オーディンたちはヘリコプターについていき、ドローンを降下させて本社ビルの屋上に着地した。するとヘリコプターの操縦士や金城国際重工の重役の他にも、大きな銃を持った軍用ジャケット姿の人間も板のだ。それも六人もいて、丈夫なヘルメットとプロテクターを着けて眼にもゴーグルをかけて、腰にも小型の銃やナイフも提げていた。

「おやおや、大会社の警備員としてはしっかりした装備ですね」

 ラーンが武装した人間を目にして呟くと、リーダーらしい男がゴーグル越しに睨みつけてくる。

「口を慎め、機械人形。あのお方のおなりだ」

 武装隊員に囲まれたシグルスたちの目の前に、杖をついて紋付の紺の羽織り袴の服、長いひげに白髪の多い髪に背の曲がった老人が現れる。顔や体はしみとしわだらけだが、眼は鋭くつり上がっていて、まるでワシかライオンのようであった。

「よく来てくれた。アスガルド星のロボットたちよ。わしは金城国際重工の現会長、金城信友(かねしろのぶとも)じゃ」

 老人はオーディンたちを目にして薄ら笑いを浮かべて自己紹介をする。ヨルズやラーンたちは金城会長を目にして声は出さずとも顔をしかめる。するとシグルスが金城会長に問いかけてきた。

「金城さん、お願いします! 夢乃ちゃんを栄希くんとお父さんとお母さんの元に帰してやって下さい!!」

「シ、シグルス!」

 ラタトスクが金城会長に懇願するシグルスを止めた。

「ああ、あの子か。お前さんたちを呼び寄せるためとはいえ、連れさらったのは悪く思っておる。だけど手荒な真似はしとらんよ。食事も着替えも与えて元気にしておる。案内しよう」

 金城会長の言葉を聞いてシグルスはホッとした。夢乃は無事だと。シグルスやオーディンら、そして武装隊員や重役たちも会長についていった。


「シグルス、来てくれたのね!!」

 夢乃は七階のスイートルームにいた。ベッドもテレビも机も椅子もあって、台所は会長に雇われているコックが夢乃の食事を作ってくれていた。

「夢乃ちゃん、無事でよかったよ」

 シグルスはとびついてきた夢乃を目にして安堵する。

「シグルスの友達も取り戻したことですし、帰らせていただきましょうか」

 ヨルズが金城会長に尋ねてくると、金城会長はシラを切らした。

「何を言っている。お前さんたちアスガルド星のロボットたちは我が社が造る戦闘用ロボットの基礎として残ってもらうぞ」

「な、何だって!?」

 それを聞いてフェンリルが叫んだ。

「やはり金城国際重工は軍事国のバックアップを受けて戦闘用ロボットを造ろうとしていたのは本当であったか……」

 オーディンが呟くと、金城会長は言い続ける。

「まぁ、我が金城国際重工は二百年続く老舗でな。最初は一本の釘から畑の鋤までという具合じゃったが、時代が進むにつれて、船の部品や自動車の車体、世界大戦時なんかは戦闘機も造っていた実績もあったんじゃよ。戦後は建物の鉄骨などを造ることで事業も進化し続けて今に至る。

 そしてわしの代になって、ロボットも造るようになれたのじゃが、定められたプログラム通りに動くくらいじゃった。ある軍事国から『あなたの技術で戦争用の自立ロボットを造ってほしい』と依頼された時は一度は断ろうとしたが、相手が莫大な報酬を出してくれることを知ると、わしは世界各地に一人でもいいから自分で動いて考えて行動するロボットを探して、またそのロボットの身近な人間に監視をさせてデータを金城の本社に送るようにと部下に命令した。

 そしたら東京の町中におったとはなぁ……」

 金城会長の話を聞いてオーディンたちは沈黙し、シグルスは自分と姉だったために察して、夢乃は会長に訊いてくる。

「ロボットのデータが欲しくて、堀込くんのお兄さんに監視させたの?」

 夢乃は悲しくなった。自分の国の大型工業の会長が軍事国と密かに契約していて、戦争用ロボットの開発を目論んでいて、シグルスとフリッグが目につけられていたことを。

「じゃがアスガルド星のロボットたちが現れて、地元の少年に監視させていた姉弟のロボットよりもお主たちの方がより良い戦争用ロボットが造れそうだわい。オーディンたちよ、シグルスとそのお嬢さんは帰してやるから、お主たちはここに残れ。

 そして金城国際重工に貢献しろ」

 金城会長はオーディンたちに話を持ちかけてくる。

「へ、陛下……」

 シグルスがその様子を見て不安になっていると、オーディンは鋭いまなざしを金城会長に向ける。

「わたしはかつて、心ない人間の召使いとして扱われていたロボットだ。心ない人間に耐えかねて同志を集めて、人間に反乱したが失敗して、宇宙に追放されて支配種族のいない星に住むことになった。

 シグルスとフリッグを人間と同じ生活をさせてくれた人間たちはともかく、貴様はわたしのかつての主人と同じ。ロボットを人間の道具として扱っている! いわば、お前は我々の敵だ!!」

 オーディンの剣幕を見て金城会長は引くが、その時ズドン、という音がしてオーディンの左肩に孔が空いた。孔から煙が出ていた。武装隊員の一人が住の引鉄を引いたのだった。その様子にヨルズたちは静止して、シグルスは夢乃に見せないようにした。

「ばか! 誰が撃てといった!?」

 武装隊員のリーダーが引鉄を引いた隊員に怒鳴った。

「す、すみません。会長を手にかけるかと思って、つい……」

 そして更に多人数の足音がしてきて、シグルスたちのいる部屋に武装した警官たちと壮年の刑事が現れて入ってきたのだ。刑事は警察手帳を金城会長に見せた後、一枚の書類を出してくる。逮捕状であった。

「金城会長、児童誘拐の罪及び軍事国との違法取引違反の罪で逮捕します。あなたが裏で行(おこな)っていたことはすでに確認済みですよ」

「うう……」

 金城会長は呻ったが、警察にバレてしまってはどうにもならず、手錠をかけられて警察に連れて行かれたのだった。そして武装隊員や重役たちも会長の幇助のため警察に連行されたのだった。