5弾・7話 真相


「ワンダリングスです。お子さんがどこへお連れ行かれたかわかりますか?」

 ドーンヴィーナス号でクシー星域監獄ステーションから逃げ出した脱獄犯がトートイ星人の子供を人質に取って船内を逃げ回っていると連絡を受けたグランタス艦長、ドリッド、ブリック、アジェンナ、ピリンは息子を連れて行かれたトートイ星人の夫婦から話を聞いて尋ねる。トートイ星人の夫婦は仕立てのいいスーツとツーピースをまとい背には甲羅、肌は分厚い茶色がかった緑で夫婦ともども二メートルはある大型の異星人(エイリアン)だ。性質は穏やかで勤勉で、夫婦は息子が捕まったことにショックを受けていた。

「しっかりしてぉ、むしゅこしゃんはワンダリングスがたしゅけりゅから」

 ピリンがトートイ星人の夫人をなだめる。

「ピリン、相手は脱獄犯で人質もとっている。お前はここに残って夫妻を見ているように」

 グランタス艦長はピリンにそう言うと、ドリッド、ブリック、アジェンナを連れて脱獄犯を探しに行く。

「それで、ご主人。脱獄犯はどちらへ?」

「あの廊下の四方に分かれたところの右へ曲がっていった。息子を助けてくれ! 礼はいくらでも出すから」

 トートイ星人の亭主はグランタス艦長にすがった。

「わかりました。必ず息子さんをお救い致します。それでは行くぞ!!」

 グランタス艦長はピリンを残して、ドリッドたちを率いて脱獄犯のいる方向へと向かっていった。


 脱獄犯が逃げ込んだ『星菊の間』でリブサーナは携帯銃(ハンドライフル)を構えたまま、自分の父母や兄姉、他のエヴィニー村の住民を皆殺しにしたザーダ星人の宇宙盗賊を見て突ったったままであった。脱獄犯の種族が今でわかったからだ。

(そんな、そんなことって……)

 リブサーナの中で二つの感情が渦巻いている。自分の平穏を奪った宇宙盗賊に対する憎しみと何故自分の村を滅ぼしたのか問いただしたい気持ちが彼女の中で混ざり合う。

「おい、どうしたんだい、連合軍の使っぱになったホジョ星人よ。俺たちのことを捕まえようとしないのか」

 ガタイのあるザーダ星人がリブサーナに向かって言う。挑発だ、とリブサーナは首を振る。戦いに感情をあらわにしてはいけない、とグランタス艦長やドリッドから教え込まれていたからだ。怒りや憎しみなどの負の感情で命取りになるからだ。

 その戒めでリブサーナは何とか憎しみを抑えてだく飲して宇宙盗賊に尋ねた。

「……どうして、エヴィニー村を襲って村の人たちを殺したの?」

 宇宙盗賊はリブサーナの質問を聞いて少しの間沈黙するも、主犯格のガタイのあるザーダ星人があごをさすりながら答える。

「実はというと、俺たちは宇宙を漂っている時にホジョ星からの発信電波に気づいて、発信源の主を探しに居住区でない場所の森林地区に降り立った。

 そしたら一人のホジョ星人の若造が小型の宇宙艇送受信機を持っていてな、俺たちはそいつに何で俺たちに発信電波を飛ばしたのか尋ねてみた。そしたらそいつは、隣村の小作農の娘と婚約したがそこの娘だと次第に役不足と感じるようになってきて、同じ身分の女と結婚したいからと、俺たちに五万コズムの報酬を出してきてエヴィニー村を襲ってくれと申しだてしてきたんだ。

 五万コズムなんて大層な金だったから俺たちはそいつの依頼を受けてエヴィニー村を襲えと命じられたんだ。

 最初は婚約者の女だけ殺せばいいのかと尋ねたところ、そいつは『他の村人も殺れ』

と言ってきて、『一人殺したらおかしいから全員始末してくれ』とのことだ。まさかエヴィニー村の生き残りがおまえとはなぁ……」

 主犯格の脱獄犯はリブサーナにエヴィニー村襲撃と住民抹殺の理由を語った。それを聞いてリブサーナは宇宙盗賊が自分たちの意志でエヴィニー村を襲撃したのではなく、ホジョ星人の男に頼まれてやったからだという真相に衝撃を受けていた。

(そんな……、同じホジョ星の人が、わたしのオネエチャンノ結婚を消すために宇宙盗賊を雇ってエヴィニー村の人たちを襲わせたなんて……)

 リブサーナは膝まづく。と、その時、制服姿のままのアジェンナ、ドリッド、ブリック、グランタス艦長が宇宙盗賊を捕らえに現れる。

「リブサーナ、大丈夫か!?」

 ドリッドが膝まづいたリブサーナを見て声をかけるが、リブサーナは膝まづいて座り顔を俯かせていた。その様子を見てドリッドは宇宙盗賊たちがリブサーナに何かしたのだと悟って睨みつける。

「てめぇら、リブサーナに何をしやがった!?」

 ドリッドの威圧を見て宇宙盗賊は引くがひょろ長のザーダ星人がドリッドたちの顔を見て声を上げる。

「ああーっ、どっかで見たことあると思っていたら、以前俺たちをとっ捕まえた奴らじゃねぇか! まさか俺たちを追って宇宙豪華客船に入っていたのかよ!!」

「へっ、ここで会ったが百年目。人質にとったガキだけでなく、他にも客がいるんだぜ?」

 ガタイのあるザーダ星人がグランタス艦長に言うと、トートイ星人の子や他の船客が怯えているのを目にして、グランタス艦長たちは深刻な表情になる。

「……何が望みだ」

 グランタス艦長が宇宙盗賊に問いただしてくると、金髪のザーダ星人は返答する。

「そうだな、豪華宇宙客船の脱出用宇宙艇を一機もらおうか。客人のをいただこうとしたが、今の状況なら、わかるよな?」

 それを聞いてグランタス艦長は黙り込む。もし断れば人質の命はないかもしれないし、豪華客船の脱出用宇宙艇となると、この宇宙船を指揮するハーヴェイ船長の許可を取らなくてはならない。

「どうするんですか、グランタス艦長!?」

 ブリックが尋ねてくるので、グランタス艦長は少しうなるも、携帯端末を懐から取り出してハーヴェイ船長に連絡を取る。

『どうしましたか、グランタス殿?』

 グランタスかんちょの端末の画面にハーヴェイ船長の姿が立体的に映し出される。

「ハーヴェイ船長よ、宇宙盗賊を見つけましたが、彼らは『星菊の間』に逃げ込んで人質を取り、ドーンヴィーナス号の脱出用宇宙艇を一機出してくれれば人質を開放してくれるそうなので、どうかそこの所は……」

 グランタス艦長の話を聞いてハーヴェイ船長は躊躇うが、よく考えてから答えた。

『わかりました。宇宙艇の一機ならなんとかなります。ですが罪のない船客の命は……』

 ハーヴェイ船長は複数の人々を助けるために宇宙艇の一機を差し出すことに決めた。

『わかりました。では……』

 グランタス艦長は通信を切り、宇宙盗賊たちにドーンヴィーナス号の脱出用宇宙艇を差し出すと話を持ちかけてくる。

「宇宙盗賊たちよ、ハーヴェイ船長が脱出用宇宙艇を渡すと許してくれた。だからそこにいる船客を助けてやってくれ」

「か、艦長!!」

 アジェンナたちが艦長の発言を聞いて声を揃える。ブリックがグランタス艦長に耳打ちをする。

「いいのですか、これでは連合軍の依頼に失敗したことに……」

「だが時には犯罪者の条件を飲むのも役目の一つだ」

 グランタス艦長が小声で言うと、グランタス艦長はどくように出入り口への道を空けた。

「行け。命と宇宙艇、どちらかを選ぶのならここにいる人々の命を優先する」

「へっ、話が分かるおっさんじゃねぇか・あとそれから……」

 ガタイのある宇宙盗賊が手の空いている金髪のザーダ星人に命じる。

「この女も連れていけ。この女に見せたいものがあるんでな」

 金髪のザーダ星人がうずくまっているリブサーナの首根っこをつかんで立たせる。

「あっ」

「ちょっ、リブサーナをどうする気!?」

 アジェンナがリブサーナを連れて行こうとするザーダ星人に向かって叫ぶ。

「逃げる前に見せたいものがあると言っただろう・別に殺る訳ではない」

 金髪のザーダ星人がアジェンナに言った。ガタイのある男、奪った食べ物を担ぐ、ひょろ長の男がリブサーナを連れて『星菊の間』を出た。

「リブサーナが……」

 ドリッドが宇宙盗賊たちを追おうとしたが、グランタス艦長が首を横に振る。

「リブサーナは後で逃げ出すだろう。だが今はここのいる人たちの救助が先だ」

 グランタス艦長に促されてドリッド、ブリック、アジェンナは人質の少年と『星菊の間』にいる船客を部屋から出した。


 リブサーナは衝撃を受けて愕然としているまま宇宙盗賊に連れられてドーンヴィーナス合の中を歩かされていた。他の船客及び航海士従業員は宇宙盗賊の出現のため船長命令で客室や厨房、機関室の中に隠れて回避していた。

「着いたぞ」

 ガタイのあるザーダ星人がリブサーナに言う。リブサーナは敵とはいえ顔を上げて自分たちのいる場所が『四〇一号』の前だということに正気になる。

「ここ、パルプリコさんの部屋の……」

「そうだ。お前の仲間の村人を殺せと命じたのはラドヴィー村の村長の息子、パルプリコだ」

 ガタイのあるザーダ星人がリブサーナに伝えた。リブサーナは気づいていたのだ。若いホジョ星人の男が隣村の小作農の娘と婚約したが役不足と感じて宇宙盗賊を呼び寄せてエヴィニー村を襲わせたことを。自分の村と周囲の村しかホジョ星のことを知らないリブサーナであったが宇宙盗賊の話を聞いていくうちにそうではないかと思っていたのだ。

「じゃあ、パルプリコさんの部屋に侵入して枕に針を入れて傷つけたり、飲み物に微毒を入れたのも……」

「そうだ、俺たちがやった。このリジィはピッキングの達人でな錠前の鍵も電子ロックも破ることが得意でな。仕返しとしてケガを負わせようとした」

 リジィというのは金髪のザーダ星人のことでガタイのあるザーダ星人が教える。

「でもあなたたちはわたしの父も母も兄も姉、多くのエヴィニー村の人々を殺した! 言われたからって命を奪うなんて……」

 リブサーナは叫び拳を握って涙を流した。すると四〇一号室の扉が開いて赤いシャツに黒い上下のパイピングスーツ姿のパルプリコが現れる。

「!!」

 四人はパルプリコが現れたのを目にして驚くが、パルプリコはこの光景を見て動揺するも普段通りに言ってきた。

「リブサーナちゃん、何でここに!? というかお前たちは……」

 三人のザーダ星人の脱獄犯に囲まれているリブサーナを見てパルプリコが叫ぶ。

「へっ、俺たち宇宙盗賊に婚約者とその家族、他の村民を殺させた卑怯もんのモヤシ野郎!! お前が滅ぼさせた村の生き残りにお前の真実を教えに来たんだ!」

 ガタイのあるザーダ星人が訛りのあるホジョ語で怒りのこもった罵声を浴びせた。

「な、何を言ってんだよ? ぼ、僕はエヴィニー村が滅んでゼラフィーヌも死んだ時は都で法律家の勉強をしに留学に行って知らなかったんだ! 

 そしたらエヴィニー村が宇宙盗賊に襲われて村民は殺害されていて、僕は盛大にショックを受けたよ。もうすぐ結婚の矢先に婚約者を死なれたんだよ!? 僕はむしろ被害者なんだよ! ゼラフィーヌの喪が明けるまで他の娘(こ)との結婚を待とうとしたんだけど両親が……」

 パルプリコはエヴィニー村が滅ぼされて婚約者も死んでいた時は自分はラドヴィー村以外の場所にいたことを語った。だがリブサーナや宇宙盗賊にはみえすいた嘘のように思えた。もし宇宙盗賊の言っていることが本当だったら……パルプリコはなんてひどい男なのだろうか。パルプリコは言い続ける。

「だ、第一、婚約破棄なんてしたら慰謝料を出さなくちゃいけないじゃないか! 貧しい小作農の女に数万コズムも払わなきゃいけないなんて! ああ見えてゼラフィーヌって案外腹黒い女だったんじゃないのか!? 貧しい農家の生まれで弟と妹の面倒も見なくちゃいけない環境らしかったから、玉の輿になって楽して生きようという魂胆があったんじゃないか!?

あんな邪な女……」

 パルプリコのセリフを聞いてリブサーナはムラムラと怒りが湧き出し、バシーンと思いっきりパルプリコの左頬を叩いたのである。その途端にパルプリコの顔が赤く腫れた。

「……これ以上、姉の侮辱はやめて……。そんな勝手な理由で……、わたしの家族や友達や村の人たちは死ななくちゃならなかったの!?」

 リブサーナは怒りで顔が真っ赤になり身震いし、目に涙を浮かばせていた。

 その時、四〇一号室周辺の扉が次々に開いてきて、パルプリコの両親や獣型、鳥型、魚型、爬虫類、虫型などの高身分の異星人(エイリアン)たちがぞろぞろと出てきて一体何の騒ぎかと集まってくる。

「どうしたんだ、パルプリコ。一体何が……」

 パルプリコの父が息子に尋ねてくると、パルプリコは今がチャンスかのように血相を変えて父や他の船客に言いふらした。

「父さん、こいつだよ、僕の前の婚約者の村を襲って、婚約者とその家族や他の村人を殺した連中は! この子を人質に取っただけでなく、僕の命も狙ってきて……」

 パルプリコの発言を聞いてパルプリコの両親、他の船客たちはザーダ星人の宇宙盗賊に憎しみの目を向ける。

「ちょ……待てよ……。俺たちは自分たちの意志で殺したんじゃない……。こ、この若造に依頼されて仕方なく殺ったんだ……。頼む、やめてくれよ……」

 その時、リブサーナが携帯端末を出してきて〈録音・再生〉のアイコンを操作して、端末からある会話の録音が再生される。

『リブサーナちゃん、何でここに!? というかお前たちは……』

『へっ、俺たち宇宙盗賊に婚約者とその家族、他の村民を殺させた卑怯もんのモヤシ野郎!! お前が滅ぼさせた村の生き残りにお前の真実を教えに来たんだ!』

 つい数分前に語られたパルプリコと宇宙盗賊の会話である。

『僕はむしろ被害者なんだよ! ゼラフィーヌの喪が明けるまで他の娘(こ)との結婚を待とうとしたんだけど両親が……。

 第一、婚約破棄なんてしたら慰謝料を出さなくちゃいけないじゃないか! 貧しい小作農の女に数万コズムも払わなきゃいけないなんて! ああ見えてゼラフィーヌって案外腹黒い女だったんじゃないのか!? 貧しい農家の生まれで……』

 リブサーナが再生させた会話を聞いてパルプリコの両親は唖然とし、他の船客もだんまりしていてパルプリコがあんなことをするなんて信じられないような顔つきになっていた。パルプリコは自分の両親にエヴィニー村襲撃の張本人が自分だと知られてショックを受け膝まづく。パルプリコの父と母はパルプリコにこう告げると自分の部屋に戻っていった。

「……ホジョ星に帰ったらゴラスベーノ王に告げて、裁判でお前の処罰を決めてもらう」

 パルプリコは自分のしたことがエヴィニー村の生き残りであるリブサーナに知られただけでなく、自分の父母や他の船客に知られてしまい抜け殻の状態になってしまった。


「リブサーナ!!」

 宇宙盗賊に連れて行かれたリブサーナを探しにアジェンナ、ブリック、ドリッド、グランタス艦長が駆けつけてきた。

「どうやら無事のようだな」

 ブリックがリブサーナの様子を見て安堵する。ドリッドは宇宙盗賊だけでなくパルプリコの様子を見て首をかしげる。

「? 一体何があったんだ……」

「あとで詳しく説明するよ……」

 リブサーナがみんなに言った。宇宙盗賊たちはというと。

「もう俺たちは逃げません。逮捕されます」

 グランタス艦長にこう告げると見せかけも不意打ちもすることもなかった。

 こうしてドーンヴィーナス号に逃げた脱獄犯は全員逮捕されて、リブサーナのエヴィニー村の因縁も終わったのだった。いや、リブサーナのエヴィニー村の壊滅の悲劇は彼女の中で永遠に有り続ける。


 宇宙盗賊の逮捕から九八時間後、クシー星域の宇宙連合軍の宇宙艇が来て宇宙盗賊を連行した。丸みを帯びた白と青の機体の宇宙艇に三人の宇宙盗賊が両手に手錠をかけられて入っていく。ガタイのあるザーダ星人がリブサーナにこう言った。

「言われたとはいえ、お前の家族や友人を殺した罪は必ず償う。さよならだ」

 宇宙盗賊が連合軍の宇宙艇に乗せられると、連合軍の宇宙艇はクシー星域の監獄ステーションに進路を向けて発進した。

「……リブサーナにとって大変な出来事だったな」

 ブリックがリブサーナに声をかけると、リブサーナはだまって頷く。ワンダリングスの面々はドーンヴィーナス号の制服からいつものシャツやパンツなどの服装になっていた。宇宙盗賊によって人質にされていたトートイ星人の男の子は親元に帰されて助かった。

「もう連合軍の依頼は解決した。我々もドーンヴィーナス号を去ろう」

 グランタス艦長が艦員(クルー)に言うと、一同はドーンヴィーナス号内に停泊させているウィッシューター号の中に入って出発した。

 ウィッシューター号はドーンヴィーナス号に別れを告げ、宇宙の海に入っていった。

 後部から青白い放物線を放出し、ウィッシューター号は濃紺に白や赤や黄色の星々、大小の惑星、白や灰色の衛星を背景にして飛んでいく。

 ウィッシューター号の通路に立ち窓の景色を眺めるリブサーナ。その様子をアジェンナとピリンが見ていた。

「サァーナ、げんきになりゅかな……」

「いずれにせよ時間がリブサーナを受け入れてくれるよ」

 ホジョ星人は実りの民。日々の糧を耕し蒔いて水を与えて光を浴びせる。男も女も子供も老いも富める者と貧しい者も関係なく役立たせる。決してからしてよい苗などない。

――それがホジョ星人の全ての民に伝えられる言葉であった。しかし、枯らしてはいけない苗の中に毒の苗があって、その毒の苗がひと束の苗を枯らしてしまった。

 リブサーナは家族も友人も家もない。毒の苗に枯らされたひと束の苗の生き残りである自分は故郷の星を離れて成長することになった。これは神の啓示でもあり運命でもあり自身の決意でもあった。

「罪は必ず償う」

 宇宙盗賊のあの言葉はまんざら嘘ではないのはリブサーナは信じられた。宇宙盗賊から真実を知ることができたために憎しみが和らいだのかもしれない。

「サァーナ」

 ピリンが声をかけてきたのでリブサーナは振り向いた。

「いっしょにあしょぼ」

「そうね……」

 リブサーナはピリンと一緒にピリンの部屋へと歩いていった。家族も友人も家もないリブサーナだったが、今のリブサーナには仲間がいる。過去の礎が今の自分であり、未来を築いていくのは自分自身なのだから。